最近では世間に定着した、「できちゃった婚」によって家族となる夫婦のカタチ。色んなアプローチはありますが、例えば「できちゃった婚」の場合、子供が自立するまで本当の意味での「夫婦だけ」の時間は数十年先になりそうですよね。いずれのカタチにしても、子育てを終えた夫婦が二人でゆったり暮らす家は新鮮な気持ちと、また互いに見つめ直せる機会かもしれませんね。今回ご紹介するのはいずれ訪れる夫婦のみの生活を中心とした計画の住宅です。宇佐美建築設計室が提案したのは部屋数を少なくし、平屋のような建ち方をした住宅でした。住空間での移動を減らし、掃除や可能な限り住宅のメンテナンスなど、夫婦力を合わせて行えるよう、そんな小規模住宅が完成しました。
前面道路から少し小高い場所に建つ本住宅。周辺は農地や近隣の家々に囲まれ、遠くの山並みを眺められる静かな環境です。敷地を少し上がっていくと、木々の緑の合間に見える外壁板張りの黒い外観が覗きます。二階部分を抑えめに作られた本住宅は一見、平屋建て住宅のように小ぶりでコンパクトな印象も。屋根に一本そびえる煙突は、少し黒くてシックな外観に温かさを添えるようなアイテムです。
大きなテラスで繋ぐのは玄関戸口と全開口の居間。大きく開く開口は気持ちいい眺望の他、芝生や植栽、周辺の雑木林など、緑豊かな環境はその四季の移ろいを楽しむことも可能です。もうその居間では半屋外のように外部と内部の境界線はありません。外をそよぐ風の力がそのまま居間で感じる事が出来るはずです。
小高い丘から景色を楽しむための大きな開口。ゆったりと伸びる軒の出にゆとりあるテラスは、見通しが良く心地よく涼むことができます。軒裏まで黒塗装が施されたデザインはシンプルながらも引き締まった印象です。比較的周辺からも見通せるテラスは、周辺とのコミュニケーションを取りやすく、 社交性のある場所にもなります。
無駄なものを削いだように、シンプルでナチュラルな居間です。天井は屋根勾配に沿って開口部へを下がり、視線は開口へと誘導されるようです。室内の壁は珪藻土塗、床は無垢板などを使用した素材の質感が気持ちい空間。なんと正面の作り付け家具、ベンチソファは来客や帰省した子供たちが休めるように、ベットとしても使う事が可能なんです。木と土に囲まれた居間はその自然素材を存分に楽しむことが可能です。
壁面にたっぷりの収納を持ったキッチンスペース。そこに立てばすべてに手が届くような収納力の高さと、動線の短さはストレスなく家事を行うことができそうです。造り付けのキッチンはお鍋や食洗機などが気持ちよくピッタリと収まります。木製の引き出しや天板など、使い心地や手触りなども温かみのある優しいキッチンです。